翌朝、「大江戸温泉」を出て、朝のお台場を散歩する。
昔、僕が高校生の頃、日野啓三氏の「夢の島」という小説が話題になったことがある。
夢の島
日野 啓三
1985年の刊行である。小説の内容はいまやほとんど憶えてないのだけど、ちょうどウォーターフロントの開発が話題になってた頃で、まだ正直何もない野原だった晴海とか、有明の風景を舞台にしたやたらと寒々しい感じの小説だったと思う。
その小説の風景を実感したかったし、当時のことだから「ブレードランナー」やギブソンの小説とかの影響もあったと思う。
バスでわざわざこのあたりまで来て、(船の科学館の周辺あたりだったと思う。)一日なにするというのでもなくうろうろと歩き回ってたことが何度かありました。(ええ、まあ、若かったですからそんなこともしたくなっちゃったりするわけですよ。)
で、この日朝「大江戸温泉」の東京テレポート駅の辺りから、お台場までぶらぶらと歩いていたら、確かに大きなビルがニョキニョキ建っていてまるで風景は変わってしまっているんだけど、不思議にその20年前の風景とあまり変わらないような印象を受けた。
結局大きなビルもそこに誰もいなきゃ、そこらに生えてるススキと同じ温度しか持ちえないんだ。
誰もいなくなった廃墟のビルが徐々に周りの風景に侵食されていくように、その日の朝のお台場は不思議と周りの自然の存在感ばかり目に付くのでした。
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さて。
お台場でかろうじて開いてるのを見つけたコーヒーショップで朝食をとり、これから水上バスで浅草に向かおうというのだが、どうやらまだ最初の船が出るまで1時間もあるみたい。
なんで、再びユリカモメと都営浅草線を乗り継いで行くことにする。
お台場から、浅草まで40分もかからないんじゃないか。
あっという間に着いちゃう印象だけど
今度はやたらと人臭い街だ。
で、浅草到着。
続く。