夏庵`s nest

nest [nest]
1(鳥, 虫, 魚, 小動物の)巣, 巣穴.
2居心地のいい場所, 休み場所, 隠れ場所, 避難所.

<< 11/9(水)今日のご飯 | main | 神楽坂散歩 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | -
下町ダニーローズ公演「あ、うん」 
「下町ダニーローズ」というのは、落語家の立川志らく師が主宰している劇団なのである。とはいえまだ大いに名を売っている劇団である、というのでは無い。まだこれからのごく小さな劇団である。
それが、あの「あ、うん」をやるという。小劇場の舞台で。
「あ、うん」はいわずと知れた、向田邦子さんの傑作TVドラマであり、女史の唯一の長編小説でもある。映画化もされ、大きな商業演劇の舞台にもなっている。
志らく師にとっては「あ、うん」は特別の思い入れのある作品であるという。「あ、うん」日本一愛する男、と公言して憚らない志らく師が、これまでオリジナルのコメディを演じてきて、自分たちの芝居の力というものを自ら認め、その上でやってみようじゃないかという「あ、うん」である。
師の落語のファンであれば、これはまずはともあれ観ておかねばという舞台ではないかと思い、いってきました。
場所は神楽坂のシアター・イワトというところ。
中に入ると想像以上に狭い舞台で驚く。当然客席も座布団敷きの桟敷席。
こういう窮屈な席で芝居をみるのは何年ぶりだろう。

さてお芝居のほうの感想。
さすがは志らく師。
シネマ落語で鍛えられた元の作品の一番いいエッセンスを掬い取る技は見事というべき。
限られた空間、時間の中で、「あ、うん」の世界を過不足無く描いた、まずは及第点といえる芝居ではあった。
でも、生意気を言わせてもらえれば今回に関していえば「及第点」のお芝居でしかなかったような気もするのである。
「あ、うん」の世界を愛しすぎている画ゆえに、今回はまだ、志らく流「あ、うん」にはなっていなかったのではないだろうか。

やはり一番弱かったのは笑いの要素だろう。
出来の良くない地口の繰り返しが、本筋にあまり関係ない人物の奇声が志らく流のギャグだというのか。まさか。
本来、原作の持っていたおかしみさえ、どこかに置いてきてしまったようではないか。
本来的に「あ、うん」は喜劇であると思う。その部分はもっと突き詰めるられるように思ったし、それでこそ落語家の演出する「あ、うん」であるはずだ。

主要登場人物それぞれの役者はそれぞれに熱演だったと思う。
しかし、例えば柳家一琴演じる水田は、立派過ぎるのである。水田はもっと滑稽な男だ。家族に、あるいは親友に虚勢を張って威張ってもなんだか軽く見られて見透かされてしまうような、いってみれば哀れな男である。
そうであるからこそ、門倉の男伊達もまた光るのではないか。その対比が滑稽なのだし、そこにあるなにか少しゆがんだような友情に2匹の狛犬に対比されるようなコンビの面白みが出てくるのではないか。
だから、水田の造型がいわゆる戦前の日本型家族の長であるべき典型的人物として描かれるのであれば、門倉はもっと徹底的に落語的人物でも良かったはずだ。
金持ちでもあり、女にも持てる。しかし、いい加減で、常識ハズレで人間的にはまるでなっちゃ無い、けど愛嬌があるどこか憎めない人物を、志らく師が演ずればそこにもっと喜劇の味が出てくるのではないか。
例えば、冒頭のシーンで門倉の登場、水田との再会を喜ぶよりも前に民に抱きつき、「奥さーん、あいたかったぁ」などとおどけて、仙吉に「相変わらず困ったやつだ」とたしなめられるような人物、それはもちろん原作の人物造型とは大きくかけはなれるのだけど、今の劇団の役者の構成、使える舞台や時間の制限から言えばそれぐらいの脚色は必要だったはず。
それでも原作のエピソードを余さず取り入れて、必死にTVドラマのキャラクターを演じきろうとされてる姿勢は、ああ、ほんとに「あ、うん」が好きなのだなという思いが伝わったし、やはり思い入れの強すぎる作品を自分のものにするということの難しさも感じたお芝居でありました。

さて、会場は大入り満員。足もぎゅーっと縮めて見なければならない2時間半の舞台は正直キツかった。その辺の苦痛が芝居自体の評価に少し影響しているかもしれません。
ともあれ、これから伸びていく劇団にはこういう時期は必ずある。
小さな舞台でありながら評判が重なって入りきらないほどお客さんが詰め掛けて、本当にきつい思いをしながら、この劇団がこの先どうなっていくのか見極めてやろうという観客の容赦ない視線と、それの答えることの出来る力をつけてきた劇団の熱演のぶつかる、その生の現場に立ち会えることこそが小劇場の芝居を観る何よりの楽しみだった。
でも、もうそういうことが若干キツクなってしまう歳にもなったのだな、としみじみしてしまう、そんな夜でもありました。



| お芝居 | 09:10 | comments(2) | trackbacks(1)
スポンサーサイト
| - | 09:10 | - | -
コメント
なるほど〜そういう見方もあるのですね。私も志らく師の「あうん」観ましたが、落語家としてよりも身近に感じられた点がよかったです。落語家としてはちょっと近寄りがたかたので。
| ミミ Paquet | 2005/11/14 2:31 PM |
>ミミさん
そうですね、とてもよくできたお芝居だとは思ったのですけど、僕的には少し物足りない気がしたんですよね。
僕にとって「あ、うん」ってそんなにきれいなばかりの物語じゃないような気がしてたから。
でも、確かに今回のお芝居は志らくさんの、どうだこれが俺の表現だ、参ったか!というような部分がなくて、本当に大事なものを丁寧に抱えてるようなそういう思いが伝わってくるような舞台でしたね。
| 夏庵 | 2005/11/14 2:44 PM |
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://gure720.jugem.cc/trackback/398
トラックバック
あ・うん
 立川志らく脚色・演出で向田邦子の『あ・うん』を神楽坂Theatre Iwatoで観た。志らくの落語は縁あって何回か生で聴いたことがあるが、芝居は初めてだった。 志らくは天才肌の落語家だと思う。落語を聴くたびに見事だなあ、と思う。頭の回転、演技、エスプリ、ス
| ダーリンはフランス人シェフ | 2005/11/14 2:31 PM |
CALENDAR
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< June 2019 >>
PROFILE
RECOMMEND
RECOMMEND
GALAXY
GALAXY (JUGEMレビュー »)
クレイジーケンバンド, FIRE BALL, PAPA B
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
LINKS