夏庵`s nest

nest [nest]
1(鳥, 虫, 魚, 小動物の)巣, 巣穴.
2居心地のいい場所, 休み場所, 隠れ場所, 避難所.

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文七元結
 えー、今年も押し詰まりましていよいよ、大晦日。
 ということで、まあ、ちょっと落語の話でも。
 

 年末の風景を織り込んだ噺というのも随分あります。
 まずは「芝浜」。これはおなじみのとこですなぁ。

 それから「文七元結」。これも有名な人情話です。
 昭和の大名人たちがそれぞれの個性で演じ、また話し自体も舞台になったり歌舞伎で演じられたりと非常広く愛されている噺です。
<噺のあらすじはこちらで>
 で、この噺をCDで二人の演者で聞き比べてみようという趣向です。


落語名人会 2
落語名人会 2

志ん朝の落語〈2〉情はひとの…
志ん朝の落語〈2〉情はひとの…
古今亭 志ん朝, 京須 偕充


 まずは古今亭志ん朝。
 これはまずは王道かつ、最も完成された形の「文七元結」かも知れない。
 過去の名人のいいところを吸収しながらまたさらに人物を膨らまし噺の背景に余韻を持たせている。
 とにかく笑わせて、大いに泣かせて、年末から新年に聴くにはまさにうってつけのスカッと気持ちのいい噺です。
 とにかく悪い人間が一人も出てこない。すべての物語が善意で廻っていき最後はこれ以上ないという完璧なハッピーエンドで終わる。
 まっとうすぎることをいえば、まさに生きる希望が湧く、というような噺です。



  ただこの噺、どうにも上手く出来すぎてる、というのもあるん。
 娘を売って得た金を見ず知らずの人間にポンくれてやるなんてねぇ。
 江戸っ子気質を強調してといってもなんか納得いかないみたいなね。
 もちろんそんな意地悪いこといわずに素直に笑って泣いてすればいい話ではあるのですが、そこの部分の説得力にこだわり、ただのいい話には演じない「文七元結」もあるんですねぇ。
 
 
 
 立川談春の「文七元結」。
 笑わせない、泣かせない。
 ただ人間がいて、それぞれにのっぴきならない関わりがあって、それが転がって話になるというそれだけ。
 もちろんただボーっとのっぺらぼうにやってるんじゃないよ。
 その噺の本質のおいてるのは博打の凄みである。つまり人間同士の切ったはったの駆け引きである。
 主人公の左官屋長兵衛。腕のある左官職人であるという設定は無論なのだが、志ん朝が江戸っ子、無類のお人よし、ゆえに付き合いから始めた博打にずるずるとはまり込みにっちもさっちも行かなくなった、だらしがないが基本的には罪のない人物として描いてるのに対して、談春の描く長兵衛はこれはもう完全に博打に淫してしまった人物である。その深みに自ら飛び込み抜けようにも抜けられなくなっている人物である。
 そんな長兵衛に博打の仕組みを懇々と説いて聞かせる佐野槌の女将。女手ひとつで吉原の大見世を切り回す女丈夫の凄みを感じさせる演出。
 何のお宝もねえ腕一本で生活してる職人に何で五十両もの金を貸して博打させるか、それはあんたの腕にそれだけの価値があるんだという話をしておいて、その借金を肩代わりしようじゃないかと切り出す。
 当然俺様の腕を見込んでの話と思い、喜んで申し出を受ける長兵衛だが、女将は娘を形にとると言う。
 ここら辺は完全に博打の駆け引きなんだな。
 佐野槌の女将に人助けの気持ちがないわけではない。しかし、ただ貸してもこの男が返すわけはない。しかもこのお久という娘に五十両以上の値打ちが確実にあると踏んでの申し出。
 だから長兵衛も乗っかってしまう。博打だとわかってるから娘を置いて帰ってくるのだ。
 手元の金はもう使ってしまいたくて仕方ない。仕事をしたいなんて思ってやしない。だが、博打でこの金を使えば、この勝負は負けだ。
 そこへ金がなきゃ死ぬという若造がいる。
 だからくれてやるのだ。
 こんな金に縛られて、窮屈に仕事なんかしたくない、が博打じゃ使えない、だから、見ず知らずの人間に、その大金を一瞬で失ってしまうという快感と引き換えに、渡してしまうのだ。たかだか金のことぐれぇで死なねぇんだ。どんなに堕ちようが、地獄を見ようが人間そうと思わなきゃ死なねぇモンなんだ。
 そこまでの話し。
 後はとってつけたように、結果上手い具合になりましたとさという話しである。

 ナンダそんな話しじゃ面白くないじゃないか、といえばそうとも言える。
 でもたぶん本当に面白い話ってきっとそんな感じだったりするんじゃないのかなぁ。


 志ん朝の笑って笑って、泣いて泣いてよい気持ちになるという、そういう、これこそが落語の醍醐味というべき完成された芸と、談春の人間同士の関わりあいと、駆け引きと、そこから生まれ転がっていく、ただそれだけを説得力のある噺として聴かしてしまう芸の凄み。

 お正月にテレビで若手芸人の品評会も面白いし、中には大混雑の寄席に出かける人もいるかもしれない。
 けど、ちょっとCDとか買ってきて、じっくり落語という話芸のとんでもなさを体験してみるのというのも、ちょっと面白いかもなんて思ったりしています。




立川談春“20年目の収穫祭”
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| 落語 | 13:02 | comments(0) | trackbacks(0)
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