夏庵`s nest

nest [nest]
1(鳥, 虫, 魚, 小動物の)巣, 巣穴.
2居心地のいい場所, 休み場所, 隠れ場所, 避難所.

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石井桃子の猫
 犬が好きとか、猫が好きとか言うのが世間にはあって、僕はずっと、どちらでもない、寧ろ犬好きかな?と思っていたのだけど、いずれにしろただそれが小さな生き物だからといって無条件にそれが好きなるなんてことはないはないなぁーという人間だろうと思っていたのですが、猫を飼いはじめて十年以上もたつともちろんそんな冷たいことをいえるわけもないわけで、今では街でも猫さえ見かければ屈んで手のひらを上に向けてオイデオイデしながら、舌で音を出して何とか気を引こうとするごく普通の猫好きになってしまったわけです。

 だから子供のころには確かに読んだ記憶がある石井桃子の「山のトムさん」なんていうのはもちろん猫好きの自分である今に読んだほうが百倍も面白くて、なんだか終いには読みながらじんわりと目に涙まで浮かべて読んでしまう有様だったりする、四十の男が。

 戦後の貧しい時期に山間部の農村に移り住み、しかも大人の男性のいない女手だけの開墾生活というものの苦労というのは並大抵でないだろうと思うのは、今ならば、行間のそこかしこに滲んでくるものを充分に感じ取れるけど、この児童小説はその主たる読者層である子供には微塵もそんなことは感じさせない、寧ろその生活に憧れさえ感じさせる筆致で、田舎での人間らしい、あるいは猫らしい本来の生活とはこういうものであるのだと、ちゃんとそのことは理解させえる物語になってるのである。
 主人公は鼠を捕るために、家族全員猫嫌いであるのに、仕方なくもらわれてきたトムさんという猫で、やがてネズミ捕りの成果ゆえでなく、何よりそれが、ただ猫らしい猫であるというその理由のみで家族全員に愛され、家族の山の生活にどうしても欠くことのできない仲間になっていく様子は、僕が猫が好きであるということのすべてがそこに書いてあるとしか言いようがない気さえする。
 図書館で借りて、返してしまったので、引用することが出来ないのが残念だけど、トムさんの仕草やその時々の鳴き声や、これはやはり大人のちゃんとした猫好きなら読んで御覧なさいよ、ねえ、そうだよねえ、こんななんだよなあ、猫って、としかいえないのだな。

 一緒に収められてる「べんけいとおとみさん」というのは子供と飼い猫と飼い犬がそれぞれ普通に人間の言葉で話し合いながら進む物語で、さらに小さな子供向けなのだけど、そんな設定でありながら猫は猫らしく、犬は犬らしく、そして子供は子供らしく、それゆえになんともいえずおかしいというユーモア小説。思わず笑ってしまい、であまりの愛らしさにやっぱりなんだか泣けてしまいそうになってしまうのは、なんだかもうこれらは今の日本では失われてしまった物語のような気がするからだろうか。

 だから本当に言いたいのはそれらの物語が語られる日本語のなんとも美しいことで、今だからこそ、石井桃子氏の本というの万人に(猫好きに限らず)読まれるべき素晴らしい本当の読み物なのだと思うのです。


石井桃子集 (2)
石井桃子集 (2)
石井 桃子
| book | 06:37 | comments(1) | trackbacks(1)
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コメント
はじめまして。
私も山のトムさんが好きな作品です。
おっしゃることまったく同感。猫と暮らした人間にはたまらない作品です。トラバをさせていただきました。
| こにゃくう | 2008/07/14 4:22 PM |
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トム猫さんと石井桃子さん
{{{: 08年4月3日(木)の朝刊に訃報が載っていた。 [[attached(1,right)]]  「ああ・・・石井さん、ついに。  でもトムは石井さんにやっと会えたのですね」  児童文学者の'''[http://www.iwanami.co.jp/hensyu/jidou/jtop_isii100th.htm
| 極楽な日々 | 2008/07/14 4:19 PM |
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