夏庵`s nest

nest [nest]
1(鳥, 虫, 魚, 小動物の)巣, 巣穴.
2居心地のいい場所, 休み場所, 隠れ場所, 避難所.

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そして発見される物語・島田虎之介
東京命日
東京命日
島田 虎之介

 見えざる物語、語られざる物語についてそれを物語るというパラレルな構造に漫画のストーリーテリング(絵物語)の新しい地平を開いた「ラストワルツ」よりも、島田虎之介の2作目は、より巧妙で手の込んだやり口で、語られざる物語を描く。
 前作同様この作品にも複数の主人が活躍する。
 しかし、前作と違い今回の主人公たちは前作ほどの隠された歴史、もしくは有り得たかも知れないもうひとつの歴史に関わったような大きな物語を抱えてるわけではない。
 それぞれにやや特殊な事情やドラマは抱えてはいて、時にそれが大きくクローズアップされるが、物語としてはそれぞれが凡庸といってもいいような話であり、また前回のように各話に明確な区切りもなく、かなり断片的にエピソードがつながれているため、一読すると正直一体これらの話のどこが面白いのかさえわからないという印象なのである。
 それでやっぱり納得できなくて、もう一度はじめから読み直してみる。(これがすぐできるのは漫画の特権である!)
 すると、ああ、なんだか本当にまるで魔法のようにすべてのエピソードが有機的につながり始め、それはまさしく人間同士の偶然の出会いと、近しい人の死という、おそらくはあらゆる人の生の営みにおいて最もドラマッチックであろう二つの要素に関する特殊な物語が、明確な輪郭をもって浮き上がってくるのである。


 そう、今回の「東京命日」は読者である我々に最終的に発見されるべき物語なのである。

 そしてその物語の名称は主人公のひとりが撮る未完のドキュメンタリーフィルムのたタイトルとして僕らに提示される。

 そしてラストの一齣は映画監督小津安二郎の墓石に刻まれた「無」という一字。

 何度もいうようだけど僕らが語るべきなにかなど実は何も無い。
 ただそれでもおそらくはそこにまだ語られざる物語はあるはずなのだ。
 語るべき価値など問題ではない。ただそれがそこにあり、僕らによって発見され語られねばならないのだとしたらそれが唯一の必然であるということ。

 
 
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