夏庵`s nest

nest [nest]
1(鳥, 虫, 魚, 小動物の)巣, 巣穴.
2居心地のいい場所, 休み場所, 隠れ場所, 避難所.

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公園の日々
ホンの少し前、失業中の頃にはとにかく近所の公園にばかり行っていた。
戦前には高級ゴルフクラブだったというその公園は、周囲の鉄道駅からの交通の便が極端に悪く、平日の昼間、特に寒い今ぐらいの時期には、かなり広大な敷地に驚くほど少ない人しか訪れてなくて、そこをぶらぶらと散歩したり、弁当を食ったり、楽器の練習をしたり、ただボーっとなにを見るというでもなく、眺め渡している時間というのは、なんだかものすごい贅沢をしているような気分がした。
いま、日々の仕事に追われている毎日で、なにを懐かしく思うかといえば、あの公園で過ごした日々に違いない。
たまには休みとって、温泉でも行ってのんびりしたいナーとか、友達と合ってバーっと飲みに行きてぇーナーとか、そんなに思わないね、ただあの公園でボーっと半日過ごした贅沢を時折思い出す。

そこには「くじら山」というおそらくは人工的にこさえた小高い丘のような場所があって、そこの天辺は一番のお気に入りの場所だった。そこから眺め渡す景色は、僕の座る山の天辺からのなだらかな傾斜は芝生になっていて、その下に小川が流れている。その岸辺の上はコンクリートに覆われていて、スケボーやらなんていうんだろ、自転車の曲乗りみたいなの?そんなことの格好の練習場になっていて、その向こう側はちょっとしたグランドのような平らな土地があり、子供たちがサッカーだの野球だのの練習してたり、今の時期なら凧揚げなんかもしてる。その向こうはもう公園の敷地外で細い道路を挟んですぐに切り立った崖上の土地になっている。国分寺崖線というのだ。そこに住宅もあるのだけど、緑の多い地域になっていて、針葉樹の森のように見えて、実際はその崖上にそういう樹が植わってるだけで奥行きはなく、崖の上から向こうは住宅街なのだけどそこまでは見渡せない。
それなりに遠くまで見えているようで、不思議に距離感のないのっぺらとした、2次元の景色で近景と遠景に同時に焦点をあわせるように眺めるとむしろ自分の作った小さな箱庭を眺めて楽しんでいるような気分がするのだった。


パーク・ライフ
パーク・ライフ
吉田 修一
正月、実家に帰って両親と話をすると、何故かいつも最近観た映画だの、読んだ本だのの話になって、最近とにかく楽しみなのは朝日の連載小説で吉田修一の「悪人」がすごく良い、と絶賛するのであった。
で、吉田氏の過去の作品も幾つか読んだらしく、中でも芥川賞をとった「パークライフ」は、話はともかく、主人公の自分の見ている実際の風景と心の中に湧き出る心理的風景をひとつの場面に、主人公の実際に見ている風景として描き出していて、そうした描写力は
素晴らしく、本物だと感じられる作家だそうだ。(ちなみに最近村上春樹もいくつか読んでみたけど、ああいう小説に一定のファンがいるのは解かるけれども、本物の小説家とはいえないと思う、そうです)
んで、僕も読んでみたら、そうですね、まあ面白かったというぐらいの感想ではあるんですけど、でもその公園で過ごす時間というあの不思議に日常の延長としての非日常というか、外を眺めながら、不思議に内側に心が向いていく感じと言うか、開かれた孤独というのかなぁ。決して独りになることを欲して、公園に行くわけではないんですよ。そこにそれぞれの事情はありながら、公園の時間という無駄な時間を抱えている人がいるのを眺めていられる安心感というか。非常に独善的かつ遮断された限定的なコミュニケーションを求める場という気分も多分にあって。まあ、連れているペットを通しての限定的な会話とかね、ランナー同士のお互いに知らないライバル意識とか、いつもギターを練習してるあの人は上手いのにいつもおんなじとこで間違える、あの不注意さがなければかなりのプレイヤーなるんじゃないかしらんなんて思ったりすること、なんだけど、そういうことや公園ていう限定的空間を俯瞰してみてみたい、あるいは断層に割って 観て見たい欲望は、自分の内部(人体構造や臓器)へのあくまで表層的な興味という矛盾した欲望と、底のほうででつながっていて、僕があの公園の丘の上から箱庭のように眺めていた風景というのと同じ感覚だとも思うし、そういえば心理療法の「箱庭療法」というのは、患者に自由に箱庭を作らせてるとそこに図らずもそこにその人の内部が表現されているものらししく、その箱庭を何度も壊し、造っていくことで、患者は治療を施されるということ、そして確かに僕が公園で得ていた感覚はあんまり陳腐な言葉でうんざりするのだが、それはやっぱり「癒し」というやつだったんですね。
まあ、そんなことを考えた小説でした。
一緒に収録されていた「flowers」という小説は、もっと解かりやすい構造を持った作品で人によってはこっちの方が面白い優れてると思うのだろうけど、僕はこういう小説はなんか嫌いだな、生理的に。
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